自分軸という言葉が使われるようになっていますけれども、これはワガママとか自分勝手というよりも「自分の人生は自分で決める」というようなニュアンスがありまして、欧米ではフランス革命以来、集団社会や階級的政治的圧力に人生が翻弄されることを良しとしない基本理念として大切にされていると思います。ところがどっこい、日本人に限らず、自分で決めると言っても、また自分がやりたいことをやると言っても、実はそのすべてが誰かに認められたいがためにやっている場合があるものです。文字通り何をどうやっても親兄姉が褒めてくれない・認めてくれない家庭環境で育つと、大人になってもいつか認めてもらえる日が来るのを心の奥底で期待する気持ちが残り、虚しい努力であるにも関わらず人生すべてをその目的のために捧げる生き方になる場合があります。機能不全家族とか共依存とかアダルトチルドレンという言葉がある通り、そういう人はかなりいて、本人にその自覚がないのが普通だと思います。自分では自分軸で生きているくらいに思っているかも知れません。学校にしても職業にしても結婚にしても、親兄姉に認めさせたい一心(他人軸)で決めているのに、それが例えばミュージシャンや俳優として、自分の好きに生きていると思い込んでいたりします。その逆に、傍から見れば自分を捨てて世のため人のためのみに生きているような人が、実はそのすべてを自分で決めているという場合もあり得ます。精神世界には自我欲望を捨てろという教えが多いですが、まずは自分を尊重することを学ぶ必要があるというのが私の意見です。