日本の住環境が美しさの面で諸外国から大幅に後れを取っている、とよく言われます。昔の建物は一般的に火事や地震に弱かったという点は否めないので、特に戦後はとにかく火事や地震に強く、価格的に安く作れるという技術面が優先されたのも無理はありません。だけど、あまり美しくはありません。卵が先か鶏が先かじゃありませんが、美しい家に住んでさえいれば心も清くなるということはないものの、心が美しい人は必ず住環境も美しく調和しているものなので、変な話ですが商業ベースの建築様式をより美しいものに改善して行く仕事は今後有望である可能性があります。よく考えてみれば当たり前のことなんですが、日本のいわゆる伝統的な色や形の中には普遍的に美しいものが幾らもあるので、まずはそれを徹底的に学んだ上で、そこをベースに現代の建築技術や加工技術を加味すればいいと思います。ヨーロッパみたいに普遍的に美しい色や形を繰り返し使って行くことが様式美になるので、同じように日本の様式美を生み出して行けると思います。侘び寂びというのは禅の考え方が入って来るので、侘び寂びを生活様式に取り入れることによって人間性が向上するという確証がない以上そこに戻る必要はないかも知れませんが、今の建築は写真写りを気にするあまり、自然光の明暗を考慮に入れなさ過ぎる傾向があるように思われます。日本人的な感性に響くような住まい作りを、現実的にあまりお金がかかり過ぎないようにポイントを押さえてやって行く必要があるかと思います。