性質としての神様を表す「真・善・美」という言葉が宗教界ではよく語られますが、これが人間界ではいわゆる本当の愛や正しい行いや「和を以て貴しと為す」の精神として現れるなどとされます。ところが現実社会では高い理想を貫き通すことは難しく、目指したとしても「正直者が馬鹿を見る」結果になるに違いない、と考えられているのはみなさんもよくご存じの通りです。人間を肉体だけの存在と思い込んだところに諸悪の根源がある、とは大方の宗教で一致する見解かと思いますが、人間社会を有利に運ぶことを目的に、あくまで人間界でのみ通用する真善美の下位互換バージョンが多くの人によって考案されるに至ったと言えましょう。あくまで仮の喩えですが、真善美に対して「強さ・賢さ・綺麗さ」がこの世で成功するための最強の条件である、と多くの成功哲学が一致して説いているのではないでしょうか。そこに神秘学で言うところのいわゆる幽界の生物からの助力を当て込むオカルト要素を加える場合もあるでしょう。強くて賢くて綺麗な人はまず間違いなく成功できる、とはほとんどの人が同意するところでしょうし、事実その通りです。しかし肉体のみに基盤を置く弱肉強食的なやり方なので、この路線で行くとこの世は早晩滅んでしまうというところが問題なわけです。どんなものにも存在している限り真善美の片鱗は含まれているものなので、自己利益や自己中心性を限界まで極めた人がひっくり返って上昇したという前例は過去にはあったように思われますが、私たち全員がそのやり方で行く余裕はもうない、というのが実情かも知れません。