人間は本質的に競争意識を持っている、という理解は潜在意識にかなり深く入り込んでいて、今日までほとんど疑われることなく来たように思われます。「戦争は万物の父(ヘラクレイトス)」とは大昔の格言ですが、これを現代風に解釈すれば、「競争原理を通じて科学技術が進歩する」みたいな感じになり、それが事実であることを歴史が証明しているように見えます。実際にこれまではライバル意識が強く、プライドが高い人ほど社会の中心で活躍できたわけです。逆に優秀なのに競争心の薄い人は、誰かに手柄を横取りされるのが世の常だったのではないでしょうか。そんなワケで私たちは、成功するには闘争心を持つことが必要であると思い込んで来たようなところがあります。ところが、競争意識が進歩の鍵である、というのが共通認識じゃない未来がやって来つつあるのです。これまではライバル意識やプライドの薄い人は成功できないのが常識だったかも知れませんが、ライバル意識やプライドをモチベーションとせずに成功する人が若い世代で既に現れ始めていて、これは大きな希望だと思います。承認欲求の強い人たちがメディアで目立つので、一方でとても良い変化が起きているのを見逃してしまいがちです。私が思うだけですが、競争原理がモチベーションになっていないのに自分なりの考えで努力できる若者が増えるかどうかが、新世界が近付いているかどうかの一番の指標と言えるかも知れません。