近年「自分を愛する」ということが世界的なキーワードになっておりますが、もちろんいいことだと思うんです。これは家庭的社会的なしがらみの強い国や地域の人々にとって、自分が本当は何を望みに何をしたいのか、声を上げるように励ますメッセージとしてとても適切だと思います。個人の意志を尊重するという意味で使われていると思うんです。ところが、シンプルなメッセージが持つ性として、どのようにでも解釈できるという問題点も孕んでいます。個人主義が既に発達している国や地域の人々にとっては、自分のやりたいことをやって楽しむのは当たり前の話ですよね、という風に聞こえるんじゃないでしょうか。ワガママを肯定するメッセージとして受け取る人の方が多いかも知れません。本来の意味からすると、分け隔てをしないのが本当の愛なんですから、「自分を愛する」の本来の意味は、自分を含めたすべての人を愛するということです。自分だけを大切にして誰かに迷惑を掛ける可能性を考慮しないのがワガママということですが、そうではなくて、すべての人が同じ権利を与えられていると理解できたら最高です。好むと好まざるとに関わらず、あらゆる種類の人がいるからこそ社会が成り立っているし、それゆえお互いを尊重する必要があると分かれば、必ずしも神様に与えられた役割云々という宗教的な観念を持ち出さなくてもいいんじゃないかと思います。